キャッシュフロー計算書を優秀、及第点、注意、懸念で評価!資金繰りの良し悪しを分析する
【決算書|第7回】
営業、投資、財務、それぞれのキャッシュフローを用いて8パターンに分類する
1年間の企業活動の結果として、キャッシュフロー計算書には3つの活動に関するキャッシュフロー状況が記載されています。
毎日のお金の出入りの結果、入金が多ければプラスに、出金が多ければマイナスになり、項目ごとに確認することが可能です。
- 営業活動によるキャッシュフロー + or ▲
- 投資活動によるキャッシュフロー + or ▲
- 財務活動によるキャッシュフロー + or ▲
上記の3つの活動のプラス、マイナスを組み合わせると、8つのパターンに分類することができます。すべての企業は8パターンのいずれかに該当するため、これまでの推移を見れば、お金の使い方、お金に関する取り組みを評価、検証することができます。
■ キャッシュフロー 8パターン
1.安定型
- 営業 + 投資 + 財務 +
- すべての活動で入金過多の状況で、キャッシュリッチに
2.改善型
- 営業 + 投資 + 財務 ▲
- 投資の回収、財務の健全化を図るなど、企業体質の改善を進めている
3.積極型
- 営業 + 投資 ▲ 財務 +
- 金融機関からの借入れ、または株主からの出資による入金を投資に回している
4.健全型
- 営業 + 投資 ▲ 財務 ▲
- 未来への投資を行う一方で、金融機関への返済を進めている
5.救済型
- 営業 ▲ 投資 + 財務 +
- 営業活動の出金過多を、投資の現金化、金融機関からの借入れなどで穴埋めしている
6.リストラ型
- 営業 ▲ 投資 + 財務 ▲
- 過去の投資を現金化して、出金への穴埋めに回している
7.勝負型
- 営業 ▲ 投資 ▲ 財務 +
- 営業活動は出金過多だが、資金を調達して未来への投資に回す勝負に出ている
8.大幅見直し型
- 営業 ▲ 投資 ▲ 財務 ▲
- すべての活動で出金過多となっている非常事態
キャッシュフロー8パターンを、4つのタイプで評価、検証する
置かれた環境、状況により、該当するキャッシュフローパターンは各社で異なります。
8つのパターンを優秀、及第点、注意、懸念の4つのタイプに分類した上で、個別に評価、検証していきましょう。
■ 優秀:パターン4
- 営業活動でプラス、未来への投資を行いマイナス、金融機関への返済が進みマイナス、という堅実なタイプ
- 営業キャッシュフローのプラス額で、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローのマイナス額を補えているかを確認
■ 及第点:パターン1、2、3
- 営業活動に伴う入金額が多ければ、経営としてはまずまずであり、及第点に
■ 注意:パターン5、6、7
- 営業活動に伴う出金額が多ければ、仕入過多、売上減少の可能性あり
- 営業キャッシュフローをプラスに転じるための施策に、早急に取り組む必要あり
■ 懸念:パターン8
- 3つの活動すべてからお金が出ている状況で、極めて深刻な資金繰りの状況と推測される
- 投資キャッシュフローがゼロに近い場合には、現金化できる資産が無く、倒産が近い可能性あり
入出金の相手は必ず存在するため、キャッシュフロー計算書は粉飾することができない財務資料です。故に、信頼性は担保されており、企業の実態を正確に表しているものと言えるでしょう。
お金の流れを切り口に企業を分析する取り組みは、極めて有意義だと思います。
■ 会計研修のご相談は、ビズハウスへ
売上、利益を現金化できているか?キャッシュフローマージンを活用した与信管理を
売上を計上する際、その全額はいずれかのタイミングで入金され、現金化されます。但し、そのタイミングは、取引条件、商材、相手先などで個別に取り決められており、実際の取引では、月末締め翌月10日払いなど、売掛金として取引するのが一般的ではないでしょうか。
キャッシュフローマージンとは、売上のうちどれだけ現金の割合が占めているか、売上のうちどれほど効率的にキャッシュフローを稼いでいるかが分かる指標です。なるべく早く現金化できている方が評価されますので、数値は高くあることが求められます。
一方で、現金化できない在庫が増加した場合、長期間回収できない売上債権が発生した場合に、その数値は悪化します。
■ 計算式
キャッシュフローマージン = 営業キャッシュフロー / 売上高 * 100
各取引先のキャッシュフローマージンを計算してみましょう。特に数値が悪化している先との取引は、見直す必要があるかもしれません。リスクを軽減するために、安定的に取引を継続するために、キャッシュフローにこだわった与信管理の実践をお薦めします。
【アーカイブ|決算書】
- 1 会計知識を備えて、数字を使えるビジネスパーソンに
- 2 損益計算書は、一年間の成績表
- 3 販管費の内訳、営業利益、経常利益の定義と見方
- 4 利益率の推移を見て、同業他社・業界平均と比較する
- 5 貸借対照表で会社の体調をチェックする
- 6 キャッシュフロー計算書で、信用力と安全性を検証する
ビズハウス主催|貸借対照表、損益計算書を学ぶオンラインセミナーのご紹介
当社では、個人の方を対象にオンラインセミナーを開催しています。その中でも、決算書が読めるヒトになる!シリーズの「貸借対照表、損益計算書を学ぶ」は、これまで多くの方々に受講いただいています。
■ 受講理由
- 自分で会社を立ち上げたが、数字に自信がない
- 管理部門に異動となり、数字を扱う必要が出てきた
- 営業部門に異動となり、顧客の決算書を読めるようになりたい など
特に40代、50代の方からは、今一度学び直したい、もっと新しい事を知りたい、という意欲をヒシヒシと感じています。
今まで「数字」「比率」を意図的に避けて仕事をされてきた方も、企業経営、組織運営、そして人材育成に会計知識は必須であることを、本セミナーを通じてご理解いただけると思います。