【研修Live|第9回】

世の中の変化に対応できるように!EBPM(Evidence Based Policy Making)で政策形成を推進する

世の中は、常に変化しています。その変化に対して柔軟に、一個人も、一企業も、最適解を探し続けなければなりません。

人口増、右肩上がりの経済、潤沢な資源があった数十年前の環境であれば、何を取り組んでも上手くいく可能性が高い状況であったと思います。しかしながら、現在は真逆の環境にあります。

現状を正しく把握せずに、思い付き、思い込み、総花的な取り組みを続けていても、上手くはいかないでしょう。

情報やデータなど科学的な根拠を踏まえて、適宜適切な政策を立案、実施できるように。昨今、地方自治体の政策形成のアプローチに関して、EBPM(証拠に基づく政策立案)に注目が集まっています。

EBPMとは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで、合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること、と定義されています。

特に地方自治体では、政策効果の測定に関連する情報や統計などのデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、行政への信頼に資するとされています。

そのため、内閣府が中心となり、EBPMの普及を後押ししています。

■ 従来の政策形成プロセス ※Opinion Based Policy Making:意見に基づく政策立案

  1. 地域の現状、課題を明確にせず、抽象的、総花的、誰にも波風が立たない目標を設定する
  2. 科学的な根拠のない、思い付きな数値目標を設定する
  3. アイデアベース、エビデンスに基づかない政策を羅列し、優先順位を付けず、とりあえず実施する
  4. 政策効果を評価せず、実行したからOKで終わらせている

■ 従来の政策形成プロセスの課題

政策を立案する場面

  • 政策の必要性に関する根拠が、客観的なエビデンスに基づいていない…
  • 継続するべき理由が不明確なまま、前年度の政策や事業が漫然と踏襲されている…
  • 合理的なロジックに欠ける政策立案、目標設定がされている…

政策を評価する場面

  • 実効性のある政策評価がされていない…
  • 政策の達成度を測定するための成果指標が明確でなく、効果測定ができない…
  • 政策目的の達成手段である評価する行為が形骸化し、評価を行うこと自体が目的になってしまっている…

■ 本来あるべき政策形成プロセス ※Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案

  1. 地域の現状、課題を定性的、定量的に把握して、具体的、重点的な目標を設定する
  2. 科学的な根拠に基づいて、数値目標を設定する
  3. ビジョンの実現、問題や課題を解決するための政策メニューを厳選し、優先順位を付けて実施する
  4. 各政策の結果を評価して、改善する、次の政策に反映する

その場の意見や奇抜なアイデアに基づいた政策は、地域の現状、将来のビジョンに沿った内容にはなっていません。

理想は、統計情報、行政評価情報、市民アンケートなどの活用しながら課題を抽出し、政策を立案できるように。そして、政策の有効性、効率性、経済性を評価し、政策の継続要否判断や改善点を明らかにすることです。

ロジックとエビデンスに基づき、OBPMからEBPMへの転換が求められています。

尚、EBPMにおいて使われるエビデンスは、2種類あります。

現状分析のためのエビデンス、政策効果を把握するためのエビデンス、それぞれ必要なタイミングで活用できるようになりましょう。

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ロジックとエビデンスを政策形成の両輪に!体系的なリサーチに基づいた科学的根拠を採用する

その時々において最適な政策を形成、実現するには、ロジックとエビデンスの両輪で取り組んでいく必要があります。両方の特徴を掛け合わせて、最適な政策を立案、実現するイメージです。

ロジックとエビデンスは補完的な関係にあるため、どちらかが欠けてしまうと政策形成に支障をきたします。対処療法で終わらない地域政策を形にするには、原因とメカニズムを正確に把握しなければなりません。

ロジックとは、思考法のことです。EBPMにおいて活用する思考法は、論理的思考と批判的思考の2種類になります。

問題や課題が発生する原因やメカニズムを深掘りして、真因を見極めることに繋がります。

■ 政策形成における思考法

  • ロジカルシンキング : 物事に筋道を立てて、各段階、各要素別に分類、分解する
  • クリティカルシンキング : 物事の前提の正誤を検証した後に、その事象の本質を見極める

一方、EBPMに必要なエビデンスは、体系的なリサーチに基づいた科学的根拠(Research Based Evidence)が求められます。質、量、正確性、客観性、正当性、一貫性などを備えた根拠を、オープンデータから、あるいはデータを購入して準備しましょう。

尚、大量のデータ、高度な統計技術を駆使したエビデンスがあっても、EBPMに活用できなければ宝の持ち腐れです。高コスト、意思決定者に理解不能、政策形成に活用できなければ、EBPMには不適当と判断されてしまいます。

そのため、エビデンスをEBPMに役立たせるには、以下の条件を備える必要があります。エビデンスを扱う際には、注意が必要です。

■ エビデンスがEBPMに役立つための条件

品質、精度、客観性

  • 入手ソースは客観性があるもの
  • 情報やデータ自体が納得いくもの、原因と結果が正しくとらえられているもの
  • 人の考えを引用するのであれば、大多数の人が共感できるもの

信頼性

  • データ収集が厳密、分析方法が妥当、分析結果が明確だと、強力な論拠に

適切さ

  • タイムリーで話題性があり、政策的な意味合いを持たせる ※昔はこうだった、は不十分

実用性

  • 政策立案者が容易に政策に変換できるもの
  • コストや時間など、費用対効果にも配慮する

客観的で信頼性、正確性、実用性が担保されたエビデンスが、適宜適切な政策形成の基盤となります。

政策形成・実行プロセスは4フェーズ!エビデンスに基づき、段階的に、確実に

EBPMに基づく政策形成、実行プロセスは、4つのフェーズに整理して取り組むのが一般的です。

それぞれのフェーズにて必要なエビデンスは異なるため、その時々で必要なものを準備、活用する流れになります。

■ フェーズ1:ビジョンの設定

まずは、プロジェクトが達成しようとしている目標の枠組みを示さなければなりません。プロジェクトの成否を判断する、ベンチマークの役割にもなります。

ビジョンが無いプロジェクトは、必ず失敗します。思い付きや模倣では無く、自分の言葉で紡いだビジョンを設定しましょう。

尚、全体のビジョンを設定した後に、分野別のビジョンを設定する流れになります。

個別ビジョンの寄せ集めは、全体のビジョンにはなりません。分野別のビジョンを相互に関連付けながら、全体のビジョンを実現する(支える)イメージです。

■ フェーズ2:コア問題の発見、政策目標の設定

フェーズ2は、現状を把握し、問題を洗い出し、政策課題に結び付け、目標を設定する段階です。政策論議の議題に乗せるか否かの判断を行うために、信頼できるエビデンスを構築しなければなりません。

現状分析、将来予測を踏まえて、コア問題の発見、政策課題の抽出へと展開します。その後、コア問題の原因把握、コア問題の結果追究を行い、政策目標を設定する流れとなります。

論理的思考、WHYを繰り返して問題発生の真因を把握することは、全体ビジョン、分野別ビジョンを実現するために解決すべき、重要な課題の発見に繋がります。

ある意味、政策形成のヒントにもなるため、事実の羅列ではなく、正確で有意義な現状分析、将来予測を行いましょう。

■ フェーズ3:政策立案

フェーズ3は、ビジョンの実現、目標の達成に効果を発揮する政策を策定する段階です。フェーズ2で発見したコア問題を解決するために必要な条件、内容を備えているか、各政策の的確な評価が必要になります。

まずは、戦略に影響する地域環境の把握からスタートです。SWOT分析、シフトシェア分析、回帰分析などのフレームワークを活用して、現状を理解しておきましょう。

その後、ビジョンを実現するための重要成功要因の確認、ならびにKPIを設定します。また、机上に挙げられた政策メニューを精査して、最も有意義な政策から順番に採用する流れとなります。

尚、政策の事前評価については、専門家による調査を行うことで、より正確に把握することができます。

  • 費用便益分析 : 便益と費用を金銭価値に換算して比較し、費用対効果を評価する
  • 経済波及効果 : 特別な出来事が追加的に発生したときに、経済にとれだけの影響があったのかを金額や増減率で表現する

■ フェーズ4:政策実行、事後評価

これまで考えてきた政策が、必ず成功するとは限りません。所期の目標をどの程度達成できたか、要したコストはどの程度か、政策実行時のモニタリング作業は必須です。

尚、政策実行時のマネジメントは、2つのアプローチが代表的です。昨今はROAMEFと呼ばれるマネジメントが注目されています。

PDCA

  • Plan : 目標設定・計画立案
  • Do : 準備・実行
  • Check : 結果分析・真因把握
  • Action : 処置是正・検証

ROAMEF

  • Rationale : 必要性
  • Objectives : 目的の設定
  • Appraisal : 事前評価
  • Monitoring : 実行と監視
  • Evaluation : 事後評価
  • Feedback : 見直し

また、政策の事後評価を行うことで、パフォーマンスの改善、課題の発見、政策継続の是非を判断、検討する材料になります。

前述の費用便益分析、経済波及効果のほかに、差の差の分析(政策を実施した場合と実施しなかった場合との差で政策効果を計測)にもチャレンジしてみましょう。

但し、実務上、政策効果が現れるのには時間がかかります。また、その間に社会経済情勢は変化するため、その効果を明らかにするのは難しいとされています。

適宜適切なモニタリングを行いながら、フィードバックと改善活動を繰り返す。

このような地道な取り組みが、最終的なビジョンの実現へと繋がります。

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