決断は慎重に、撤退は潔く!

M&A 第4回

  1. 決算書から導き出された数字をもとに、M&Aを実施するか否か判断する
  2. お互いが歩み寄り、双方の期待、希望、思惑が反映された価格に落とし込めるか
  3. M&Aはあくまで手段であることを忘れずに、買うべきか、買えるのかを判断する
  4. M&Aで失敗した他社事例を参考に、失敗しないための準備を進める
  5. 必要な経営資源を大胆に投入して、統合の推進とシナジー効果の創出を図る

■ M&A ARCHIVE

1.決算書から導き出された数字をもとに、M&Aを実施するか否かを判断する

買収監査では、詳細な財務資料をもとにした財務分析、シナジー効果を反映した事業計画書をもとにした現在の会社(または、事業)の価値を試算するバリュエーションを行います。

■ 財務分析

財務分析では、過去の実績を比率、推移、対比のアプローチで分析し、優位性(または、劣位性)を判断します。

  • 収益性を判断する利益率
  • 効率性を判断する回転率や回転期間
  • 総合力を判断するROAやROE など

これまでの経営が健全になされてきたか、確認することができます。

■ バリュエーション

バリュエーションとは、将来の可能性を数字(株価)に落とし込む作業で、代表的なアプローチは3種類あります。

コストアプローチ

保有する資産、負債の再評価を行い、時価純資産(株価)を導き出す

マーケットアプローチ

同業他社の株価を参照にして、自社の株価を導き出す

インカムアプローチ

将来得られるキャッシュフローを現在価値に修正し、自社の株価を導き出す

大企業のM&Aではインカムアプローチを用いるケースが大多数である一方、中小企業、中堅企業のM&Aでは、コストアプローチで導き出した株価に、営業利益の3年~5年分を加算した金額で取引されるケースが大多数となっています。

インカムアプローチで導き出す場合には、将来得られるキャッシュフローを予測する精度が求められます。シナジー効果の数値化には恣意性が入る余地があり、導き出された株価に大きな違いが生じてしまうため、より慎重に試算することを心掛けましょう。

2.お互いが歩み寄り、双方の期待、希望、思惑が反映された価格に落とし込めるか

■ 譲渡側の期待、希望、思惑

高く売りたい

■ 買収側の期待、希望、思惑

安く買いたい

この構図は、どのM&Aのケースでも同じです。両者の価格目線が妥協レンジに入るかどうか、お互い最後の歩み寄りができるかどうか、間に入って交渉を行うアドバイザーの力量が問われる場面です。

■ 価格が高く取引された場合

買収側は早期にリターンを得たいがために、過剰なリストラや無理な事業計画を押し付ける可能性があります。結果、そのシワ寄せが譲渡側の負担となって表れてしまいます。

■ 価格が安く取引された場合

譲渡したオーナーは自身の希望が通らなかったことによる不満が募り、引き継ぎ作業が円滑に行われない可能性があります。結果、そのシワ寄せが買収側の負担となって表れてしまいます。

クロージング後も継続して成長、発展させるためには、双方一両損の精神で取引することが一番だと言われています。

3.M&Aはあくまで手段であることを忘れずに、買うべきか、買えるのかを判断する

そもそもなぜM&Aをするのか、M&Aの目的は何か、クロージング前のタイミングに改めて確認するようにしましょう。

恣意性を排除し、客観的に納得できる取引に仕上がっているか否か、最終的な投資判断、または撤退判断を行いましょう。

■ 買うべきか?

経営理念、ビジョンに合致し、目標、計画を補完するM&Aとなるか?

■ 買えるのか?

買収後、円滑に運営し、シナジー効果を創出するための経営資源を準備できているか?

M&Aの目的を再確認し、他の手段と比較してM&Aが有意義であると再認識することができれば、その後はスピード感を持ってクロージングへと進みましょう。一方、どうしても受け入れられない条件、何がしかのシコリがある場合には、引き続き交渉を続けて問題を解決していく必要があります。その際に折り合いがつかなければ、潔く撤退する勇気を持つことも大切です。

M&Aは、実施することが目的ではありません。

時間をかけて検討してきた結果が「撤退」という判断であれば、その判断も評価に値することを理解しておきましょう。

4.M&Aで失敗した他社事例を参考に、失敗しないための準備を進める

M&Aが失敗する代表的な要因は、大きく3つ挙げられます。すべては準備不足に紐づくものですが、時間があれば準備ができて必ず成功する、という訳ではありません。限られた時間、限られた経営資源の中で最適解を見つけて、行動に移していく必要があります。

■ グランドデザインが描けていない

  • 将来へのビジョンが無い
  • 理念、目標の実現に資するM&Aかどうかが不明確
  • 対処療法的、且つ、楽観的にM&Aを考えている など

■ 雇用の配慮が無い

  • M&A実施後、処遇や福利厚生の悪化、人員のリストラ、ポスト争いなどが生じている
  • 譲渡側への配慮が十分でなく、職場風土の乱れやモチベーションの低下に繋がっている
  • 業務効率が悪化 など

■ 統合プロセスが不確定

  • 譲渡側、買収側の責任と役割が不明確
  • 何とかなる、という根拠のない自信
  • 必要な役割分担がなされていない
  • 十分なコミュニケーションを取ることがない
  • コストを軽視して、統合プロセスを進めている など

M&Aのゴールは、当初予定していた統合効果、シナジー効果を得ること。そして、今までにない新たな展開に持ち込むことです。

相当なエネルギーを費やさなければゴールには辿り着けない、という認識と覚悟を持てているでしょうか?!

5.必要な経営資源を大胆に投入して、統合の推進とシナジー効果の創出を図る

シナジー効果を一緒に創り出す!

シナジー効果の創出は、買収側の努力だけでは具体化できません。譲渡側の協力があって創り出せるものであり、早期に十分な連携ができるかどうかが、重要なポイントになります。

M&A実施後、まず初めに取り組まなければいけないことは、譲渡側のヒトに対するケアです。

一緒に会社を大きくする、一緒に会社を成長させるなど、仲間意識の醸成に努めましょう。そのためには、買収側が率先して人材交流を行い、福利厚生の拡充を進めるなど、目に見えた動きを創り出していくと効果的です。同時に、仲間外れ意識が生まれないように、モノや情報の共有も早急に進めましょう。

また、必要な経営資源は、大胆に、惜しみなく投入しましょう。

経営資源とは、ヒト、モノ、カネ、情報、時間、知的財産、意欲の7つで構成されており、M&Aを実施してから100日間でどれだけの資源を投入し、それに伴う取り組みができたかが成否を分けるとも言われています。

明るい未来を共に切り拓くために、M&Aを有意義に活用していきましょう。

    

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