BIZ対談 これまでの人材育成、これからの人材育成 第2回

  • セクショナリズムは必ず発生する!人材交流を促す取り組みを積極的に
  • 聞く姿勢を備えることで、円滑なコミュニケーションが成立する
  • これからは本物の実力を持たなければ淘汰される、厳しい環境に
  • 今回のBIZ対談のメッセージ

■ BIZ対談 これからの人材育成 ARCHIVE

セクショナリズムは必ず発生する!人材交流を促す取り組みを積極的に

  二つ目のセクショナリズムについて、これはどういうケースだったのでしょうか?組織が大きくなり、グループ化、ホールディングス化、階層化されていくプロセスにおいて、セクショナリズムは必ず出てくる問題ですよね。全体最適より自分のムラを第一に考えてしまう、とても悩ましい問題です。

栗原  このセクショナリズムの問題は、スカイマークの設立経緯、航空業界ならではの要因もあったと考えています。

これは、私が人事部部長として対応したときのお話です。前述の通り、スカイマークは35年ぶりの新しい航空会社でしたので、経験者がいなければ運営もままならず、必要な人員はすべて中途採用で補充していました。JAL、ANAなどの日系航空会社、アメリカン航空、タイ航空、ルフトハンザ航空などの外資系航空会社、その他にも自動車メーカー、旅行会社など、さまざまな業界から採用していました。

よく言えば専門家集団、プロフェッショナルを集めた組織なのですが、その後、どういう事態に陥ったと思いますか?

  元々在籍していた会社における仕事の進め方、考え方、習慣をそのままスカイマークに持ち込み、組織やチームを自分色に染めようとすることでハレーションが起きてしまったのではないでしょうか?悪気は無く、無意識にしてしまったことの方が多いと思います。今まで通りの方が、ストレスは少ないですからね。

仕事ができて、意欲があり、プライドも高い方々の集まりであったとすると、新しい文化、習慣を育てるには並大抵の努力と時間が必要になりますね。何事もゼロからイチを創ることが、一番エネルギーを使います。

栗原  そうなんです。元々の文化、習慣、考え方など軸が無い中で、ゼロから一つひとつ築き上げることからのスタートでした。まさに真っ新で、そこが面白みでもあったのですが、それに比例しての大変さがありましたね。

また、航空会社は国家資格の取得を求められる部署がたくさんあります。社内ライセンスまで含めると多岐にわたり、分かり易いところだと、整備士、キャビンクルー、グランドハンドリングでしょうか。そういったライセンスを保有することで専門性が高まり、サービスの向上に繋がればいいのですが、自分達は特別だという優位性が醸成されてしまい、セクショナリズムが発生してしまいました。

  とても悩ましい問題ですね。専門性は高めてほしい、ただ、他部署、他業務にも興味を持って、全体最適で物事を進めてほしい。

よーいドンでゼロからスタートした状況において、一人ひとりのベクトルを同じ方向に向ける取り組みに多くのエネルギーを割いたのではないかと推測しています。このケースも、コミュニケーションの重要性に繋がりますね。

人事部として、社員研修やイベントの開催など、何がしかの取り組みはされたのですか?

栗原  当時の人事部では、組織に横串を入れられるような取り組みを考えて、実施していました。社員研修もその中の一つでしたし、社内報の作成も始めました。社内報は人事部が骨子を考えて、個別にテーマを渡して内容を考えてもらう方式を取りました。

一人ひとりのベクトルを同じ方向に向けることの難しさを、このときにとても痛感しましたね。

聞く姿勢を備えることで、円滑なコミュニケーションが成立する

  社員研修という言葉が出てきましたので、少しこの辺りについて質問させてください。ビズハウスでもさまざまなテーマの社員研修をご提供しているのですが、当時はどういったテーマの研修を実施されていたのですか?

栗原  一つはビジネスマナー研修、これは、航空会社としては必須ですからね。大手デパートの外商で働かれていた方をスカウトして採用し、デパートの接客をベースとしたビジネスマナー研修を実施しました。予算の関係もありましたので、ビジネスマナー研修については、できるだけ自前で対応するようにしました。

もう一つは、コミュニケーションに関する研修です。こちらは外部の研修会社にお願いして、リーダー、マネージャー、中堅、若手、それぞれの立場におけるコミュニケーションの取り方、あり方を身に付けてもらいました。

  ビジネスマナー、コミュニケーション、この二つがポイントですね。これまで伺ってきた内容から、栗原社長個人としても特に重視されていた要素でしたし、どの会社、どの業界でも必要なことでもありますからね。

相手が不快、不愉快にならないように自分を律することができるかどうか、歳を重ねても気を付けないといけないですね。

栗原  そうですね。特に歳をとると、周りの誰も注意してくれなくなりますからね。客観的に自分を見る力、そして、問題や課題を修正して改善する力は備えておくべきですし、何事にも謙虚に、ですね。

  宜しければ、スカイマークに勤務時に大事にしていた言葉、方針、メッセージなどがありましたら、ぜひお聞かせください。

栗原  繰り返しになりますが、スカイマークは35年ぶりの新しい航空会社でしたので、世の中に貢献する、世の中に一石を投じる役割を担った会社であると常日頃から伝えていました。自分達はすごいことをしている、という意識付けですね。当時の社長からも言ってもらっていましたし、社員のモチベーションは喚起し易かったと思います。

ただ、そのモチベーションを一つの方向に向かせることが大変でした。辞めたいと相談を受けた際にも、世の中に必要な会社であること、その一員として働いている喜びを伝えるなどして、退職を防いでいましたね。

  栗原社長はコミュニケーションをとても大切にされておられる、と感じています。言葉で伝えることにとても気を配っている、相手の状況に合わせて言葉を選ぶこともできる。部下、後輩からはとても慕われていたのではないですか?

私は、自分なりにコミュニケーション力を定義するにあたって、発信する力よりも受信する力の方が大切ではないかと考えています。誰もが自分の言いたいことを自由に、正確に伝えたいのですから、発信力は自然と身についていくものだと思っています。逆に、聞く姿勢、聞くスキルは意識しなければ備えることはできません。

栗原社長は、まずは相手の言いたいことを十分に聞き、理解した上で、伝えたいことを相手に合わせて分かり易く伝える、というスタンスのように見受けられます。私の話もよく聞いてくださいますし、私もとても話しやすいので、ついつい長話に。

栗原  人間は感情を持った生き物です。感情のシコリを持たず、人間関係が良好であってこそ仕事は前に進むと考えています。人間関係を構築するためには十分なコミュニケーションが必要であり、物事のすべてに通じる、くらい大事な位置付けとしています。部下、後輩のモチベーションをどうすれば上げられるか、コミュニケーションを通じて日々模索をしていた感じです。

  逆に、失敗したこと、こうしておけば良かったことなど、今振り返って反省すべきことはありますか?

栗原  私は万能ではありません。また、完成された人間でもありません。当時も何度も反省していたのですが、自分の考え、やり方を押し付け過ぎてしまった嫌いがありました。自分のポジション、組織として前に進めなければならないプレッシャーもあったので、自分が正しいと思っていたフシがありました。

人それぞれ考えがあり、それぞれの考えを尊重して一緒に事に当たらなければ、上手に行くはずはないんです。ただ、その当時は自分でどうにかしなければ、と少々気負っていた部分があったんだと思います。

  結果が求められる立場になると、自分でどうにかしなければという意識が強くなってしまうと思います。ただ、自分一人では仕事は進まない訳で、自分の気持ちをどのように消化していくか。一つの見方として、自分の気持ちを上手にコントロールできる人が上司向き、先輩向きなのかもしれないですね。

栗原  後から聞くと、私の意見や指示にまったく同意していなかった、まったく違うことを考えていたという声もありました。一人ひとりの能力を最大限発揮させるマネジメントができたかどうか、上司としての評価ポイントはそこだと思います。

ただ、思っていてもなかなか実現できなかったですね。今でも反省していますし、自責の念もありますが、それを今とこれからに生かせるように、組織の雰囲気作り、考え方の共有と一致に、時間をかけて取り組んでいます。

  ある程度の規模になると、組織づくり、組織マネジメントは永遠のテーマですね。

Royal Bhutan Airlines との調印式

これからは本物の実力を持たなければ淘汰される、厳しい環境に

  少し話題を転じて、これからの働き方についてもぜひお話させてください。

今回の新型コロナウイルスの影響はビジネス社会に大きなインパクトとなり、働き方改革は加速していくものと感じています。仕事の価値の出し方、自分の存在価値の定義も、これまでとは異なるものになるのではないか、と。

具体的には、今までは働く時間を提供して対価を得る、という働き方でしたが、質と量を伴ったアウトプットを提供して対価を得る、という働き方に変化していくと考えています。

少々厳しい表現になってしまいますが、知識、スキル、モチベーションが無ければ活躍できない環境に。期待以上のアウトプット、実績を伴わなければ、仕事が来ない環境に。まさに、肩書だけでは仕事はできない環境です。

栗原  私もまったく同様に考えています。アウトプットで結果を残せなければ、会社にいられなくなる、と。

今までは会社や肩書が守ってくれましたが、これからは会社の中でもその人の価値が如実に計られることになり、とても厳しい競争環境になると思います。ジョブ型の働き方は自分でモチベーションをコントロールしなければならず、なかなか大変になりそうですね。

  ここ数年、企業は欲しいスペック、欲しい人数を採用できない時期が続きました。ただ、今回の新型コロナウイルス、そしてAIの発達に伴い、今後は採用を絞りリストラを進める企業も増えていく可能性があります。これからのビジネスシーンでは、どういう人材が求められるとお考えですか?

栗原  アウトプットを出せること、結果を出せることに尽きると思います。自分は手を動かさず、上から言われた通りの内容を部下や後輩に指示するだけ、そして出来上がったアウトプットの批評を繰り返し、最後にハンコを押すだけの存在は淘汰されていくでしょう。電子決裁の普及で、ハンコも無くなりそうですしね。

経験に胡坐をかいていては絶対にダメで、最新、最適、最速、最短、最初などのインプットを継続できる、そしてアウトプットに繋げられる人材が求められると思います。そういう方は引く手あまただと思いますし、ぜひスカウトしたいですね。

  私も同感です。実力主義と言われる外資系企業のような働き方、価値の出し方に近付いていくと思います。その流れの中で、日本型の働き方を模索していけばよいのではないでしょうか。

それと私が思うのは、これまで以上にタイムマネジメント力が求められるのではないか、ということです。仲間内だから少し遅れても大丈夫は、通用しなくなるでしょう。

弊社でもタイムマネジメント研修を提供していますが、スケジュールを設計する力、スケジュール通りにやりきる力をどのように醸成していくか、どういう要素が必要か、クライアントごとに設計して実施しています。

栗原  ちょうど私と同年代、いわゆるバブル世代は、今では考えられないほど大した苦労もせずに一部上場企業、一流企業に入社することができました。そして、年功序列制度に従って今までやって来れましたが、時代が変わり、制度が変わり、求められる力も変わりました。この厳しい環境でどのように自分の存在価値を出していくか、悩まれている方は多いと思います。

  特に、ITの発展が目覚ましい現在ですので、ITリテラシーを備えているかも一つのポイントになるかもしれないですね。郵便、電話、ファックス、メール、WEB会議ツール、SNS、クラウドサービスなど、年齢に関係なく、新しいものを使いこなせるか否か。ものすごい数のクラウドサービスが出てきていますので、何を使うのかを選ぶだけでも、結構大変ですからね。

古いものも大事にして、新しいものも積極的に取り入れる姿勢は、とても大切だと思います。

栗原  そうですね。とりあえずやってみよう、とりあえず取り入れてみよう、偏見を持たずに、柔軟に対応できるかどうか。

時代はもの凄いスピードで進んでいますから、挑戦する、ダメなら撤退する、トライアンドエラーを繰り返して成功を掴む、ですね。それに伴い、これからの人事評価は失敗しても減点しない、挑戦したら加点する、という方式を取るべきだと思います。

  あとは、肩書にとらわれずに、リーダーシップを取れること。自分の仕事に責任を持っている人ほど、リーダーシップを備えているように思います。アウトプットに責任を持つ、自分の仕事に責任を持つ、ゆえにリーダーシップが求められる。インフォーマルリーダーシップは、これから求められるスキルの一つとなるのではないでしょうか。

今回のBIZ対談のメッセージ

BIZ対談、いかがでしたでしょうか?

第2回は、組織拡大に伴うセクショナリズム、これから求められる人材像を中心に話が進みました。

■ セクショナリズムについて

企業の成長と拡大、事業再編、M&Aなどに伴い、組織の統廃合は必ず起こり得る事象です。これまでそれぞれの文化、習慣の中で働いてきたスタッフが、ある日を境に新しい上司、新しいメンバーと新しい文化を築かねばならない環境となり、困惑する場面が多く出てくるものと思います。

また、同じ組織、チームが長い期間存在することにより、全体最適より個別最適を優先する土壌が育まれてしまう可能性があります。同じ企業なのに協業が進まないセクショナリズムに対して、何がしかの取り組みが求められます。

組織の統廃合、セクショナリズムへの有効な対処法として、以下が挙げられます。

  • セクショナリズムは所与として、人材交流、改善活動を継続してその時々の組織のあり方を考える
  • 会社の方向性や社会的な役割を全員で共有し、モチベーションを喚起し、ベクトルを同じ方向に向ける
  • 相手を不快にさせず、自分を律することができるようビジネスマナー、コミュニケーションに注目した研修投資を行う

■ これから求められる人材像について

目まぐるしく変化するビジネスシーンにおいて、これからは以下のような人材が重宝されるでしょう。

  • タイムマネジメントを徹底して、質と量を伴ったアウトプットを出せる
  • 自分の仕事に責任を持ち、インフォーマルリーダーシップを取れる
  • 新しいものも積極的に取り入れる姿勢を備えている

未曾有の災害、未知のウィルスなど、想像の範囲を超えた出来事が起こる世の中となりました。

未来を予想することが難しい環境においては、失敗しても減点しない、挑戦したら加点するといった人事評価で、社員の成長と奮起を促すことが必要とされているのではないでしょうか。

    

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