営業利益率の推移、業界平均や競合他社との比較から、ビジネスモデルの優劣を検証する
【財務分析|第1回】
損益計算書の分析は、成長しているか、利益を確保できているか、2つのアプローチで
決算書(財務三表)の中で、日々の業務に直結し、ビジネスパーソンに一番馴染みがあるのは損益計算書ではないでしょうか。一年間の企業活動の成績表として位置付けられ、企業を取り巻くステークホルダーは必ずチェックする最も重要な財務資料です。
損益計算書には、一年間の売上高、費用、利益(または、損失)が掲載されています。売上高(または、営業収益)を最上段に、各種費用、各種利益が下に向かって並んでおり、それらの数値をもとに成長しているか、利益を確保できているかを分析するのが一般的です。
■ 財務三表とは?
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
成長しているか、については、売上高ならびに各種利益のこれまでの推移から判断しましょう。単純に金額が増加していれば、成長していると定義することができます。
利益を確保できているか、については、自社の利益率を計算した上で、業界平均、同業他社などと比較して判断しましょう。比較対象より自社の利益率が高ければ、利益を確保できている、儲かっていると定義することができます。
利益を確保できていれば、売上高をより大きくしていくために必要な施策を!
利益を確保できていなければ、無駄な費用負担はないか、どこをテコ入れすべきか、原因を見つけて改善を!
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営業利益率を通じて、事業力、ビジネスモデルの堅牢度を検証する
各種利益率の中で最も重要とされているのが、営業利益率です。一年間の事業活動を通じて、どれだけ利益を創り出すことができたかが分かる指標であり、ビジネスモデルの優劣、成否が数値として反映されています。
自社の営業利益率を何と比較するかは、各社で定めなければなりません。比較する対象に正解は無いため、自社の理念、ビジョン、経営者の想いや考え方などに基づいて設定してください。
■ 営業利益率 計算式
営業利益率=(営業利益/売上高)*100
■ 利益率の代表的な比較対象
- 業界平均
- 同業他社
- ライバル企業
- 企業規模が近い会社
- ビジネスモデルが似ている会社 など
過去5年間の上場会社における平均営業利益率について、コロナ前までは上昇傾向にありましたが、コロナ禍から直近期にかけて下降傾向にあります。業種、業界ごとに平均営業利益率は異なるため、自社が属する業界の数値は必ず確認するようにしましょう。
■ 上場会社 平均営業利益率 ※日本取引所グループホームページより
- 2017年3月期 6.4%
- 2018年3月期 6.9%
- 2019年3月期 6.7%
- 2020年3月期 5.1%
- 2021年3月期 4.9%
売上総利益率、経常利益率、当期純利益率の定義と使い方
営業利益率のほかにも、3種類の利益率があります。それぞれの定義は異なるため、確認したいこと、比較したいことに基づいて、最適な利益率を活用しましょう。
- 売上総利益率 商品、サービスの力、付加価値を知りたいときに
- 経常利益率 金融取引、財務活動を含めた会社全体の力を知りたいときに
- 当期純利益率 一年間の企業活動の最終結果を知りたいときに
尚、営業利益率を含めたこれらの利益率を使って、自社の置かれている環境、ポジションを確認することができます。
比較対象の数値を基準として、余剰資金が貢献している、借入金に依存している、コストの内訳を要検証など、自社における現在の経営状況と今後取り組むべき施策について示唆を得ることができます。
- 経営計画策定、目標設定の際に
- 組織をマネジメントする際に
- 実績評価の際に
利益率は、ビジネスパーソンにはとても大切なワードです。
言葉の定義、計算式を覚えて、日々の業務で数字を使える人材に!
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