安く仕入れて、安く作りたい!売上原価は、商材の製造、提供に費やしたコストの合計額
【損益計算書|第2回】
売上原価は、仕入れ、製造、労務など、商材を提供するまでに負担したコストの合計額
自社が提供するモノやサービスは、それらを提供できるカタチにするまでに多大なコストがかかっています。お金の流れは売上原価の出費が先であり、販売することができれば売上高として計上される(入金される)関係性にあります。
より大きな利益を計上するには、売上原価をいかにして抑えるかがポイントです。売上原価の内訳を紐解いて、何を低減できるか、何を改善できるか、日常からコツコツと取り組んでいかなければなりません。
尚、売上原価は、期中に販売したモノやサービスに関連して負担したコストを計上するルールになっています。期中に販売できたか否かを判断基準として、売上原価は計算されています。
■ ケース
- 今期仕入れて、今期販売できた → 売上原価として計上
- 前期仕入れて、今期販売できた → 貸借対照表の棚卸資産に計上した金額を、売上原価に振り替え
- 今期仕入れて、今期販売できなかった → 貸借対照表の棚卸資産に計上
売上原価に関連する比率に、売上原価率があります。売上高に占める売上原価の割合を測定する指標であり、より低い比率であるほど、コストを低減できている(利益を生みやすい体質である)と評価されます。
自社、ならびに分析対象の売上高原価率を計算して、経営の良し悪し、製造の効率性を評価してみましょう。
■ 売上高原価率の計算式
- 売上高原価率(%)=売上原価/売上高*100
- 2021年3月期上場会社平均値|68.3%
- 同期、一番低い業界「医薬品」|36.4%
- 同期、一番高い業界「陸運」|86.8%
業種やビジネスモデルによって、売上原価の計算方法は異なる
売上原価の計算方法は、業種、業態、ビジネスモデルによって異なります。また、棚卸資産(在庫)の評価方法は多数あるため、いずれを選択するかによって導き出される売上原価は増減します。
まずは、基本となる売上原価の計算式を理解することからスタートしましょう。
■ 小売業・卸売業の場合
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
- 期首の在庫に期中に仕入れた分を加算し、期末の在庫分を控除した残高を売上原価に
- 期中に無くなった分は売上に反映された(お客様へ提供した)と仮定する
■ 製造業の場合
売上原価=期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高
- 素材や材料からモノを作る製造業は、モノとして出来上がるまでにさまざまな工程が入ります
- そのため、製造原価にはさまざまなコストが含まれており、一つひとつを積み上げて売上原価を計算します
- 当期製品製造原価の内訳|期首仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末仕掛品棚卸高
- 当期総製造費用の内訳|材料費+労務費+経費
棚卸資産の評価方法は、さまざまな種類の中から選択することができます。また、評価方法を変更することも認められていますが、過去の業績との繋がりが途切れてしまうため(金額算出の根拠と計算方法が異なるため)、一度採用した評価方法を継続することをお薦めします。
業績が悪いときに棚卸資産の評価方法を変更することで、損益計算書の赤字が黒字になる場合があります。経営者の立場として、利益を出せる評価方法を採用したい気持ちも分からなくはないですが、それは数字の辻褄を合わせているだけに過ぎません。
臭い物には蓋をせずに、悪いところは早く、正確に把握して、すぐに対処を!
■ 代表的な棚卸資産の評価方法
- 総平均法|一年間の平均を計算
- 移動平均法|毎回の仕入れの都度、平均を計算
- 先入先出法|先に仕入れたものから販売して、その分を売上原価に計上
- 後入先出法|後に仕入れたものから販売して、その分を売上原価に計上
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売上原価を正確に計算するために、棚卸はとても重要な作業
小売業や製造業など、いわゆる「在庫」と呼ばれる資産を保有している企業は、年に一度、必ず棚卸作業を行っています。特に飲食店や店舗販売を行う小売業では、月に一度は棚卸作業を行うのが一般的です。
棚卸とは、帳簿にある在庫と実際の倉庫にある在庫の突合作業であり、まだ使える在庫か否かを目視で判断する機会です。よって、正確に把握しなければ意味が無いため、すべての在庫をひっくり返して、根気強く確認していかなければなりません。
尚、実際の現場では、帳簿の数と実際の数が一致することはほとんどありません。実際の数が少なくなるのが普通ですが、余りに乖離が大きい場合には、原因を究明する必要があります。
また、腐るモノ、劣化するモノを在庫として持っている場合には、商品として販売できる状態か否かは注意して見ていかなければなりません。特に飲食店の場合には、食中毒を起こしてしまうリスクもあることから、在庫の管理には一層の注意が求められます。
以上のように、数が合わない、商品として扱えない場合には、すべて売上原価に計上するのが会計上のルールになっています。それぞれがコストとして、損益計算書に計上されます。
- 棚卸減耗費|帳簿の数と実際の数にズレがある場合、その乖離分を売上原価に計上 ※実際の数が少ない場合
- 商品評価損|商品として販売できない状況である場合、その個数分を売上原価に計上 ※売れる状態ではない場合
売上原価が計上されれば、利益の減少に繋がります。
それ故に、棚卸資産は経営の良し悪しにも直結する、とても重要な業務として理解しておきましょう。
【アーカイブ|損益計算書】
- 1|売上高 企業規模が分かる、業績の好不調が分かる
- 3|売上総利益 商品・サービスの力や付加価値が分かる
- 4|販売費及び一般管理費 経営や組織運営に関するほぼすべてのコスト
- 5|営業利益 事業・ビジネスモデルの力が分かる
- 6|営業外収益・営業外費用 金融取引ならびに本業以外の取引に関するコスト
- 7|経常利益 金融取引を含めた会社全体の力が分かる
- 8|当期純利益 株主還元と将来への投資の原資