「自分らしく」の実現は孤立を招く?!社会の変化に伴い、人との繋がり方やコミュニケーション方法は変わる
【職場づくり|第5回】
広大なネットワークに溶け込むと、人との繋がりは希薄化する
私たちは、人と人との繋がりの中で仕事に取り組み、生活しています。職場においても、プライベートにおいても、人間関係が円滑であるほど、充実した時間を過ごすことができると考えられています。
但し、繋がりを広げるほど充実感が得られる、という訳ではありません。
重要なことを相談できる相手、悩みを親身に聞いてくれる相手は実はごくわずかであり、お互いが信頼し合うことができなければ、濃密な関係性は構築できないでしょう。
現在の企業活動は、日本全国を対象に、且つグローバルな繋がりの中で展開されています。多くの人と議論し、交渉することが必要で、一人ひとりとじっくり話す機会を持つことは難しい状況ではないでしょうか?
ビジネス社会では、得てしてネットワークが広いほど評価される傾向にありますが、何を目的とするかでその評価は異なります。
SNSやオンラインツールの発達により、コミュニケーション手段の利便性は格段に向上しました。しかしながら、簡単にコンタクトできること、自身の見せたい一面しか表に出さないことが、人間関係の希薄化を助長させているように感じます。
一度、自分を基点にした繋がりを評価してみましょう。
- 心から信頼できる友人やパートナーは何人いますか?
- 重大な問題、課題、悩みを相談されることはありますか?
自分にとって、本当に大切な繋がりが見えてくると思います。
■ 研修のご相談は、ビズハウスへ
昔の繋がり方、現代の繋がり方の特徴と違い
一般的に、昔の人間関係は濃密で、現代は希薄化している、と理解されている方は多いのではないでしょうか。
現在はいつでも、どこでも、誰とでも繋がれるツールにより、コミュニケーション手段で困ることは無くなりました。但し、これらは伝えること、共有することを目的としたツールであるため、人間関係を育む効果やメリットは期待できません。
■ コミュニケーションツールの多様化
- 電話
- 郵便
- メール
- LINE
- Zoom など
濃密とされる昔の繋がりは、対面によるコミュニケーションが大部分を占めていました。故に、多くの方々と人間関係を構築することは物理的にできなかったと思います。
言い換えれば、あらゆる出来事が限られた範囲の中で発生し、コミュニティ内で共有する環境にあったと思います。
人間、個性を見分けることができるのは「50人」、顔と名前が一致するのは「150人」と言われています。150人のコミュニティにおいて、日々対面でコミュニケーションを取り、情報を共有していれば、おのずと濃密な人間関係が構築されるでしょう。
一方の現代社会においては、150人以上と繋がりを持たなければ仕事や生活は成り立ちません。
周りの人を知る、自分のことを周りに知ってもらうには、やはり対面によるコミュニケーションは必須です。組織への愛着や帰属意識の醸成のために、意識的に対面でコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。
安易に、便利さに頼り切らずに、対面で一緒の時間を共有することもコミュニケーションの一環と言えるでしょう。
■ 職場におけるコミュニケーションの場
- 研修
- ランチ
- 勉強会
- 懇親会
- 人事評価
- 打ち合わせ など
職場の空間、社員同士の繋がりは、何を目指すかによってアプローチを変える
職場のあり方、どのような職場を目指すのかは、各社で異なります。
- 「労働の対価を得る場所」として、仕事をしっかり完遂すればOKという職場
- プライベートにも関わる「家族ぐるみの付き合い」を目指す職場 など
経営者や職場のリーダーがどのような組織を作りたいか、それによって職場づくりの方向性が決まり、コミュニケーションの手段や頻度が定まります。どちらかが正解、という訳ではありません。
現在は、自分らしくありたい、人間関係の煩わしさから解放されたいという意見が強いために、労働の対価を得る場所、働き易い環境を整備することが重要視されています。
■ 現在の職場づくりの方向性
- 職場や組織の濃い付き合いは、心理的なコストが大きいためになるべく避ける
- 繋がりへの依存、繋がりからの便益は金銭的なコストで済ます
- 人間関係の煩わしさからは解放される施策を講じる
一方、社員一人ひとりの意見を汲み取ると、人と話したい、先輩から教わりたいなど、実は他人とのコミュニケーションを欲している結果が出てきます。特に若い世代では、人間関係の希薄化が自分の存在価値に疑問を持たせ、心理的な負担になっています。
多様な人達が「自分らしく」働ける職場は、一人ひとりの個性に合わせた最適な振る舞い、付き合い方が求められます。
- 対面によるコミュニケーションを積極的に取りながら、プライベートには介入し過ぎない!
- 自分らしくを追求すれば、どこかで相手と相容れないタイミングが訪れることを理解する!
「自分らしく」と「相手ファースト」の最適なバランスの追求は、会社、ならびに一人ひとりに課された宿題として、日々改善していく必要があるのではないでしょうか。