【キャッシュフロー計算書|第3回】

手元資金は潤沢に!

フリーキャッシュフローは成長の原資!使う、残すの選択が会社の将来を左右する

キャッシュフロー計算書を分析するには、フリーキャッシュフローの計算と見方は押さえておく必要があります。フリーキャッシュフローとは、その名の通り「自由に使える資金」のことで、プラスであることが望ましいものです。

フリーキャッシュフローを作り出すことができれば、新たな挑戦や追加の施策に取り組む原資となります。故に、フリーキャッシュフローは経営の幅を広げるタネとも言えるでしょう。

■ フリーキャッシュフロー計算式

フリーキャッシュフロー(FCF)=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー

  • 本業で稼いだ営業CF(入金超過)を、M&Aや設備投資などの投資CF(出金超過)に充当した後でも余っている余剰資金
  • 自由に使える手元資金として、資金繰りの安定性や流動性の確保など、会社の優良度を評価する指標
フリーキャッシュフローを充実に!

尚、フリーキャッシュフローを使うか否かは、経営者やリーダーの判断に委ねられます。攻めの経営のためにお金を使う場面もあれば、未来の不確実性に備えるためにお金を使わない判断もあります。

どちらの選択が正解かは将来において評価されることになりますが、経営者が取り得る選択肢は多いことに越したことはありません。

企業経営において、フリーキャッシュフローの充実は必須と言えるでしょう。

■ 攻めの経営:お金を使う!

  • 追加の設備投資を行う
  • 財務体質を強化する
  • M&Aを実施する
  • 株主還元する など

■ 守りの経営:お金を残す!

  • 外部環境の悪化に備える
  • 手元流動性を確保する
  • 将来の投資に備える など

キャッシュフローマージンで、利益率と入金率の乖離を確認する

昨今の商取引において、損益計算書に売上を計上する同じタイミングに入金するケースはあまり無いのではないでしょうか。売上が入金されるまでは「売掛金」として貸借対照表に計上され、後日、先方との契約に基づいて入金されるのが一般的かと思います。

言い方を変えれば、損益計算書の売上や利益は実際に入金されていなくても(される予定が無くても)計上することが可能であるため、恣意的に操作できる数字とも言えるでしょう。

粉飾決済は「利益が出ているように見せる」内容が大多数であり、実際に入金されることはありません。そのため、その後の資金繰りは悪化の一途を辿っていくことになります。

よって、経営者が自社を評価する際に、また、外部のステークホルダーが企業を分析する際には、利益が入金に繋がっているかの見極めは重要なポイントになります。

実際の入金まで要確認!

利益と入金の繋がり、良し悪しを指標化したものが、キャッシュフローマージンです。営業利益率に近い考え方で、事業活動の入出金において、入金超過の実態が分かる指標と言えます。

より大きな数値である方が入金超過の状態であるため、好意的に評価されます。一方、数値が悪化している場合は原因を突き止め、早期に解決しなければなりません。

■ キャッシュフローマージン計算式

キャッシュフローマージン=営業キャッシュフロー/売上高*100

  • 売上高のうち、どれだけ現金を受領できたかが分かる
  • どれだけ効率的にキャッシュを生み出せたかが分かる

■ キャッシュフローマージンが悪化する理由

  • 債権を回収するスキル、ノウハウが乏しい
  • 長期間にわたり回収できない債権が発生
  • 利益を度外視した売上高重視の経営
  • 現金化できない在庫が増加 など

十分な手元資金を確保できるように、日常から取引条件やキャッシュコンバージョンサイクルの確認、改善に取り組みましょう。

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営業CFと投資CFの移り変わりで、経営状況の良し悪しを把握する

企業経営の良し悪しは、資金繰りにも大きな影響を及ぼします。それはそのままキャッシュフロー計算書に反映されるため、その数字の移り変わりを見ることで、企業の置かれた環境や状況を把握することができます。

営業CFと投資CFの変遷を評価するフレームワークとして、キャッシュフローマトリクスがあります。

営業CFのプラスとマイナス、投資CFのプラスとマイナスがあるため、組み合わせは全部で4種類。どの組み合わせが良と評価できるか、キャッシュフロー計算書を読み解く分析アプローチとして活用されています。

資金繰りと経営状況をチェック!

■ 営業CF:▲/投資CF:▲の場合

  • 黎明期|会社設立時のため、未だ利益は計上できず、投資を続けている段階

■ 営業CF:+/投資CF:▲の場合

  • 成長期|利益を生み出す基盤が整い、引き続き必要な投資を続けている段階

■ 営業CF:+/投資CF:+の場合

  • 安定期|ビジネスモデルとして確立された一方で、資産の入れ替えや売却など、過去の投資を再評価する段階

■ 営業CF:▲/投資CF:+の場合

  • 破綻期|商材の陳腐化、顧客ニーズの見逃しなど、ビジネスとして右肩下がりであり要撤退の段階

企業経営において、資金投下や資金回収のタイミングは極めて高度な経営判断です。早すぎず、遅すぎず、リーダーには最適な資金量を出し入れする手腕が求められています。

事業や商材には栄枯盛衰があり、何事もいずれはテコ入れしなければなりません。

キャッシュフローマトリクスを参考に、現状を定量的に評価した上で、最適なキャッシュフローマネジメントに取り組んでいきましょう。

【アーカイブ|キャッシュフロー計算書】

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