【貸借対照表|第4回】

財務分析は時系列と他社比較で!

貸借対照表をもとに、経営の安全性、資産運用の効率性を分析する

貸借対照表の財務分析のアプローチは、損益計算書のアプローチと同様です。数字や比率をベースに、過去の業績との時系列分析と、同業他社や業界平均との比較にて良し悪しを評価していきます。

貸借対照表は5つのハコで構成されている特徴から、ハコの大小や、全体に占めるハコの割合を数値化して分析を進めていきます。

■ 貸借対照表を構成する5つのハコ

  • 流動資産|一年以内に現金化できる資産
  • 固定資産|一年以内に現金化できない資産、中長期的に使用する資産
  • 流動負債|一年以内に返済しなければならない借金、支払わなければならない費用
  • 固定負債|一年以上かけて返済しなければならない借金、将来負担しなければならない費用
  • 純資産|株主からの出資、当期純利益(の一部)の積み上げ など

貸借対照表を分析することで、経営の安全性、資産運用の効率性、資金繰りの良し悪しなどを評価することができます。

一企業として健全に存在しているか、安定して経営を続けられるかどうかを知りたいときは、貸借対照表を深掘りしていきましょう。

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比率の見方に注意!比率の定義や計算式によって、数値の評価は異なる

貸借対照表にはさまざまな経営指標があります。それぞれに意味があり、計算式も異なるため、数値(割合)が大きいから良し、と単純に評価することはできません。

また、より多く計算して比率を導き出せば良しということでもありません。何を重視するか(何を目標とするか)によって指標の優先順位を定めておくことが大切です。

まずは、代表的な4つの指標を使いこなせるように。時系列と他社比較により、資金調達と資金運用の現状を把握しましょう。

比率、指標の見方に注意!

■ 純資産比率|財務の安定性が分かる

  • 計算式:純資産/総資本*100
  • 純資産による調達は会社に返済義務が生じないため、比率は高いほど財務の安全性は増す

■ 流動比率|短期支払能力が分かる

  • 計算式:流動資産/流動負債*100
  • 一年以内に支払わなければならない借金に対して、現金化できる資産が大きいほど資金繰りは安定
  • 分子の流動資産が大きいほど評価されるため、比率は高いほど短期支払能力は増す

■ 固定比率|資金調達の安全性が分かる

  • 計算式:固定資産/純資産*100
  • 返済義務の無い資金調達をもとに、中長期的な資金運用ができているかを表す
  • 分母の純資産が大きいほど評価されるため、比率は低いほど資金繰りは良好と判断

■ 固定長期適合率|固定資産の健全性が分かる

  • 計算式:固定資産/(固定負債+純資産)*100
  • 返済義務の無い資金、ならびに中長期的に返済していく資金をもとに、中長期的な資金運用ができているかを表す
  • 分母の「固定資産+純資産」が大きいほど評価されるため、比率は低いほど資金繰りは良好と判断

お金の回り方、資金繰りも貸借対照表で確認!手元流動性の確保は、企業経営の重要なポイントに

たとえ利益が出ていても、手元にお金が無ければ支払いに窮し、会社は倒産してしまいます。いわゆる黒字倒産とは、お金が無ければ経営は立ち行かなくなることの象徴的な事例です。

よって、企業経営においては、手元にお金はいくらあるのかが極めて重要なポイントです。

  • 入金は早く、多く!
  • 出金は遅く、少なく!
  • 不自然なお金の流れはないか?
  • 入出金のバランスに偏りはないか?

資金繰りの良し悪しは、運転資金、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)で評価することができます。

安定した資金繰りを!

■ 運転資金|事業の継続に必要となる資金が分かる

  • 計算式:売掛金+棚卸資産-買掛金
  • 運転資金は小さいほど、資金調達の負担は軽減される

ビジネスは先に出金(仕入、製造、販売)があり、後に入金(売上)があるため、収入が無くても経費は発生します。そのため、出金と入金の時間差に発生した費用は、運転資金として確保しておく必要あります。

■ キャッシュ・コンバージョン・サイクル|運転資金が必要な期間が分かる

  • 計算式:売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間
  • 支払った現金が、在庫、売掛金などに移り変わり、再び現金として戻ってくるまでの期間を表す

CCCはより短い方が現金化のスピードは速く、月商の2か月分以上の現預金を有していれば一安心です。

尚、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間は、経営の効率性を評価する指標として活用されています。また、効率性の評価については、総資産回転率も有意義な指標です。

  • 売上債権回転期間:売掛金/売上高*365(売上債権を回収するまでの期間)
  • 棚卸資産回転期間:棚卸資産/売上原価*365(在庫などの棚卸資産が売上に変わるまでの期間)
  • 仕入債務回転期間:買掛金/売上原価*365(掛けで仕入れた原材料の代金を支払うまでの期間)

すべての指標が良化を示すことは極めて稀であることから、まずは十分な資金の確保を第一優先に取り組んでいきましょう。

その後に、安全性と効率性の確認を!

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